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「重複投薬防⽌」から「服薬簡素化」まで
ー多職種連携で薬剤師が取り組む実践事例ー
2025年12⽉
介護⽼⼈保健施設で進める「服薬簡素化」と多職種連携
⼀般財団法⼈⽇本バプテスト連盟医療団
バプテスト⽼⼈保健施設 医務部 主任薬剤師
東原 和美 先⽣
介護⽼⼈保健施設(⽼健)における薬剤師の仕事
―バプテスト⽼⼈保健施設について簡単に教えてください。

当施設は京都市左京区に位置し、五⼭の送り⽕で有名な⼤⽂字⼭の麓にあります。同事業体の⽇本バプテスト病院が同じ敷地内にあり、病院併設の超強化型介護⽼⼈保健施設※です。⼊所者の約8割が認知症を抱えており、⾼⾎圧、糖尿病、⼼不全、脳梗塞、⼼房細動、⾻粗鬆症、がん等、複数の疾患を併せ持つ⽅が多いのが特徴です。医療的なニーズが⾼いため、薬剤の使⽤量も多くなる傾向があります。
※超強化型介護⽼⼈保健施設(超強化型⽼健)は、介護⽼⼈保健施設(⽼健)の中でも 在宅復帰・在宅療養⽀援機能が最も⾼いと認められた施設を指します。
―⽼健での薬剤師の業務を教えてください。
私の主な業務は、常駐薬剤師として薬剤管理だけでなく、⼊所者の服薬状況や薬の効果、副作⽤モニタリングなど薬学的管理を⾏っています。

⼊所時には、ご本⼈やご家族から⾃宅での服薬状況を聞き取り、持参薬の錠剤鑑別や残数確認をし、医師や看護師に情報共有をしています。持参薬は平均で7〜8剤、多い⽅では20剤に及ぶこともあります。
ケアカンファレンスや申し送り、⼊所判定会議にも参加し、多職種で情報を共有し、安⼼安全な薬物療法が⾏われるよう努めています。ミールラウンド(⾷事観察)では嚥下能⼒等を評価し、剤形を⾒直したり嚥下機能に影響する薬剤の有無を確認したりしています。また⽪膚科医師の往診にも同⾏し、外⽤薬の処置の様⼦や治療経過から、最適な外⽤薬等を提案しています。
多職種連携による多剤服⽤対策の進め⽅
―多剤服⽤対策の進め⽅を教えてください。
当施設における多剤服⽤対策は、薬剤師が中⼼となって多職種と連携しながら進めています。看護師からは⾝体状況を、介護⼠からは⽣活⾯の様⼦を聞き、職種ごとの視点を活かして情報を共有し、減薬や処⽅の⾒直しを医師に提案しています。施設に常駐することで⽇頃から多職種と密に連携しており、薬剤に関する問題にすぐに対応できる体制を築いています。
2024年5⽉には一般社団法人⽇本⽼年薬学会から「⾼齢者施設の服薬簡素化提⾔」が発表されました(※図1-1、1-2)。服薬回数を減らし、できれば1⽇1回に集約し、施設職員の多い昼の時間帯にすることで、服薬の負担が軽減されます。当施設でも⼤きな反響があり、積極的に取り組んでいます。
減薬を⾏う場合、医師や看護師だけでなく薬剤師からも、減薬の理由や何かあった場合はすぐに対処できることを伝え、不安をなくすように説明をしています。ほとんどの⽅は問題なく受け⼊れられていますが、ごく稀に不安を訴える⽅もおられます。その場合は再度丁寧に説明しますが、それでも納得いただけない場合は、ご本⼈の気持ちを尊重し、処⽅を変更せずに継続しています。
※図1-1、1-2は一般社団法人日本老年薬学会「高齢者施設の服薬簡素化提言」フローチャート(https://www.jsgp.or.jp/news/20240517-2/)より引用。
―退所する⼈にはどのような指導をするのですか。
退所時には、ご家族とご本⼈に薬剤師から現在の処⽅と⼊所中に変更になった内容について薬剤説明を⾏い、持参されたお薬⼿帳にもその内容を記載しています(図2)。
また、⽼健の「かかりつけ医連携薬剤調整加算」の要件である、薬剤変更の経緯を記載した「薬剤変更等に係る情報提供書」(図3)を、医師の診療情報提供書とともにお渡ししています。退所後、かかりつけ医を受診した際には、薬が変更になったことを主治医に伝えてもらうようにも説明しており、薬剤情報が途切れないように努めています。
―今後の展望をお聞かせください。
⽼健における薬剤師の役割はまだまだ広く知られているとは⾔えませんが、医療と介護をつなぐ役として貢献できると感じています。⾼齢者施設などの介護の現場でも、より多くの薬剤師が関わり、多剤服⽤対策や服薬簡素化の取り組みが広がることを願っています。
当施設での実践を積み重ね、地域全体での服薬アドヒアランス⽀援に貢献していきたいと考えています。
施設概要
● ⼀般財団法⼈⽇本バプテスト連盟医療団 バプテスト⽼⼈保健施設
施設形態:超強化型介護⽼⼈保健施設(病院併設)
⼊所定員:100名
短期⼊所:空床利⽤(全体の約10〜15%)
平均⼊所期間:6.1ヶ⽉
平均年齢:男性: 84.7歳/⼥性: 88.3歳(⼊所割合1:3)
関連施設:⽇本バプテスト病院(167床) バプテスト訪問看護ステーション しおん バプテスト居宅介護⽀援事業所
保険薬局が取り組む「重複投薬防⽌」と服薬⽀援の実践
総合メディカル(株) そうごう薬局ミヤノ店 平井 鮎 先⽣
薬局の紹介
・1⽇来局者数 約50名
・対応患者:65歳以上60%、⼼不全、狭⼼症、CKD、⾎液透析など複数疾患抱えて多剤服⽤が多数
・1ヶ⽉ 30軒の医療機関の処⽅箋
・施設(特別養護⽼⼈ホーム)約60名の⼊居者の調剤あり
・外来調剤としてグループホームや⼀時的な施設⼊居者も対応
―事例紹介(重複投薬の対応について): 複数の医療機関から同効薬が処⽅されていた場合、ど のように対処していますか。
⼀例を紹介します。60代⼥性の外来患者さんが、逆流性⾷道炎と⾼⾎圧でA内科を、関節リウマチでB整形外科を受診しており、両院から同じPPI(プロトンポンプ阻害薬)が処⽅されていました。
A内科の処⽅は当薬局、B整形外科は他薬局が調剤。来局時にお薬⼿帳から重複を確認し、A内科に増量不要を確認後、B整形外科に中⽌の了承を得ました。B整形外科にはトレーシングレポートを提出し、次回以降の中⽌を提案。その後、患者さんはすべての処⽅箋を当薬局に持参するようになり、薬剤の⼀元管理が可能となりました。
―「患者さんが薬を飲めない要因の抽出と解決」について具体的に教えてください。
―患者さんが持参した処⽅箋を⾒て多剤服⽤と判断した場合、どのように対応されていますか。
当薬局では2024年11⽉に、薬剤師⽀援計画を策定しました(表2)。来局時だけでなく、服薬期間中も継続的に対⾯や電話、電⼦お薬⼿帳機能を有する「タヨリス」という総合メディカル公式ヘルスケアアプリを使って患者さんの状況を確認し、医師やケアマネジャーなどにフィードバックしています。
―複数の医療機関・薬局を利⽤し、お薬⼿帳も使い分けている患者さんにはどう対応されていますか。
まず患者さんに、お薬⼿帳を⼀冊にまとめるメリットを伝えます。「薬の重複や良くない飲み合わせ、飲んではいけない薬(禁忌薬)があり、お薬⼿帳が⼀冊なら薬剤師や医療機関で発⾒できます」というように説明をしています。マイナ保険証が導⼊されてからは、患者さんの同意を得れば「オンライン資格確認等システム」上で確認できるようになっています。以前、お薬⼿帳を使い分ける患者さんの背景に「他の病院にかかっていることを主治医に知られたくない」という思いがあることを経験しました。患者さんのこのような感情も踏まえて、医師にその点を配慮していただけるようトレーシングレポートに記載し、必要があれば電話等で直接伝えています。
―他職種とはどのように関わられていますか。
地域包括⽀援センターと連携して⾼齢患者さんへの残薬確認と便秘薬の減薬提案をした事例を紹介します。90代の外来患者さんが、外科1院のみを受診し、以前はヒート調剤で薬を⾃⼰管理していましたが、地域包括⽀援センター職員の訪問で⼤量の残薬が⾒つかり、当薬局へ相談がありました。薬の整理を⽀援し、⼀包化を実施。来局時のヒアリングで、便秘薬の⼀部(ルビプロストン、酸化マグネシウム、センナエキス錠)を服⽤していないことが分かり、排便状況も良好だったため、不要薬の減薬をトレーシングレポートで提案しました。医師の了承を得て⼀部を中⽌し、頓⽤薬は本⼈の希望で継続できました。以降は、処⽅変更はなく、排便管理は良好で現在に⾄ります。
さらに本事例を、地域包括⽀援センターが主催する地域ケア個別会議でも、地域の他職種に情報を共有しました。
―今後の展望をお聞かせください。
今後は、服薬回数削減の実践をさらに広げるとともに、地域包括⽀援センターやケアマネジャーとの連携を強化し、服薬アドヒアランス不良の⾼齢者⽀援に注⼒したいと考えています。現在、⻑崎県薬剤師会や保険者と連携し「多量服薬者対策事業」への参画も準備中です。地域に根ざした薬局として、医師・看護師・介護職と顔の⾒える関係を築きながら、薬が飲めない課題を抱える患者さんが安全にきちんと薬を飲めるよう介⼊していきたいと考えています。
制作:メディカルクオール株式会社
統一コード:ETD2626A03