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2025年6月11日

訪問看護事業所における口腔・栄養ケアの実態を調査、口腔に問題のある在宅療養者への専門職(歯科医師、歯科衛生士等)の介入率は「2~3割程度」が最多

株式会社大塚製薬工場(本社:徳島県鳴門市、代表取締役社長:高木 修一、以下「大塚製薬工場」)は、在宅療養者の口腔・栄養ケアに携わる医療従事者の監修のもと、全国訪問看護事業協会の正会員である訪問看護事業所を対象に、「在宅療養者における口腔アセスメントおよび食事・栄養ケアの実施状況に関するアンケート」を行いました。

その結果、各訪問看護事業所が対応している利用者のうち、口腔に問題のある方の割合は「5割」と認識している事業所が最も多いことが明らかになりました(17.9%)。さらに、口腔に問題のある利用者について、専門職(歯科医師、歯科衛生士等)が介入している割合について尋ねたところ、「2~3割程度」と回答した事業所が最も多く(26.2%)、「10割(ほとんど全員)」と回答した事業所は7.4%にとどまりました。併せて、口腔に問題がある利用者のうち、食事や栄養状態にも課題がある割合は、「4~6割程度」が最多となりました(24.3%)。

また、令和6年度の介護報酬改定にて新設された「口腔連携強化加算」※1について、「算定する予定はない」と回答した事業所が46.3%に上り、その理由として58.3%が「歯科医師等との体制構築が難しい」ことを挙げました。さらに、この加算で求められる8項目の評価(口腔の健康状態の評価)に関しては、介護報酬として新設される前から「8項目評価していた」が4.6%、「一部は評価していた」が37.8%、「評価していない」が57.5%という結果でした。これにより、口腔の問題を認識しながらも、専門職との連携や、口腔の評価に課題がある現状が分かりました。

2022年に行ったアンケート※2においては、低栄養の評価手法や連携・協働などが課題として浮上しており、口腔領域においても同様に専門職との連携体制構築の難しさが共通の課題となっています。口腔状態の評価に加えて、体重や栄養アセスメントツールなどにより、客観的な評価を行うことで、低栄養や口腔機能も含めて在宅療養者を総合的に支援することが期待されます。

これらをサポートするため、大塚製薬工場は、在宅療養生活の食・栄養課題の抽出・解決を支援するクラウドサービス「ぽけにゅー※3」を提供しています。在宅療養者の食生活や栄養状態を整理するための「食・栄養アセスメント機能」や、多職種での情報共有を支援する「アセスメント結果共有機能」などに加えて、「口腔の健康状態の評価」に対応した機能をご準備しています。

大塚製薬工場は、"The Best Partner in Clinical Nutrition"(臨床栄養領域における患者さんや医療従事者のベストパートナーを目指す)という経営ビジョンのもと、今後も適正な栄養管理に役立つ情報や製品を継続的に提供することで、臨床栄養の領域におけるベストパートナーを目指してまいります。

大塚グループは、"Otsuka-people creating new products for better health worldwide"の企業理念のもと、世界の人々の健康に寄与してまいります。

※1 厚生労働省 令和6年度介護報酬改定の主な事項 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001300143.pdf (2025年6月現在)
※2 在宅療養高齢者における食事・栄養ケア実施状況に関するアンケート https://www.otsukakj.jp/news_release/20220617_2.html
※3
ぽけにゅー ブランドサイト https://www.otsukakj.jp/med_saas/pock_nu/

調査概要

調査名 : 在宅療養者における口腔アセスメントおよび食事・栄養ケア実施状況に関するアンケート
調査期間 : 2024年12月24日~2025年1月31日
調査対象 : 全国訪問看護事業協会の正会員のうち回答を得た497事業所
調査方法 : インターネット調査

結果概要

※各数値は小数第2位で四捨五入しています。

全利用者の5割に口腔に問題があるとの回答が最多(17.9%)

【全利用者のうち、口腔に問題のある方の割合を教えてください。】

【図1】全利用者のうち、口腔に問題のある方の割合.png

  • 口腔に問題のある割合は、5割という回答が最多(17.9%)でした。
  • 全員に口腔の問題があると認識する事業所もいる一方で、口腔に問題のある利用者は
    いないと回答する事業所もありました。
  • 既に治療済みの状態や、既に適切なケアを実施しているため問題はないと回答をした可能性も考えられます。

口腔に問題のある利用者への専門職(歯科医師、歯科衛生士等)の介入率は「2~3割程度」が最多(26.2%)

【口腔に問題のある方のうち、専門職(歯科医師、歯科衛生士等)が介入されている割合を教えてください。】

【図2】口腔に問題のある利用者への専門職(歯科医師、歯科衛生士等)の介入割合.png

  • 口腔に問題のある利用者のうち、専門職(歯科医師、歯科衛生士等)が介入している割合は、「2~3割程度」が最多(26.2%)でした。
  • 約半数(50.3%)が「2~3割程度」、「1割以下」との回答をしており、「10割(ほとんど全員)」、「7~9割程度」、「4~6割程度」を合わせた割合(37.2%)を超えていました。

口腔に問題があり、食事や栄養状態にも課題がある割合は「4~6割程度」が最多(24.3%)

【口腔に問題のある方のうち、食事や栄養状態にも課題がある方はどれくらいいますか。】

【図3】口腔に問題があり、食事や栄養状態にも課題がある利用者の割合.png

  • 口腔に問題がある利用者のうち、食事や栄養状態にも課題のある割合は「4~6割程度」が最多(24.3%)で、「10割(ほとんど全員)」、「7~9割程度」を合わせた割合は、48.8%でした。

口腔連携強化加算の新設前から「口腔の健康状態の評価」を8項目評価していた割合は4.6%

【口腔連携強化加算の8項目(口腔の健康状態の評価)は、介護報酬が新設されるよりも以前から評価していましたか。】

【図4】(口腔連携強化加算)新設以前からの「口腔の健康状態の評価」の有無.png

  • 令和6年度介護報酬改定に口腔連携強化加算が新設されるよりも前から「口腔の健康状態の評価」を8項目評価していたのは4.6%でした。
  • 「いいえ(評価していない)」との回答が最多(57.5%)でした。

口腔連携強化加算の算定予定はないとの回答が最多(46.3%

【「口腔連携強化加算」の加算取得状況について教えてください。】

【図5】口腔連携強化加算の算定状況.png

  • 「算定する予定はない」との回答が最多(46.3%)でした。
  • 「算定中」との回答は11.1%でした。

口腔連携強化加算の算定が難しい理由は「歯科医師等との体制構築が難しい」との回答が最多(58.3%)

【算定が難しい理由を教えてください。】
(口腔連携強化加算を「算定する予定はない」と回答した230軒を対象とした質問)

【図6】(複数回答可)口腔連携強化加算の算定が難しい理由.png

  • 算定が難しい理由として、「歯科医師等との体制構築が難しい」ことを挙げる回答が最多(58.3%)でした。
  • 次いで、「事業所内の業務都合(マンパワー不足など)」が31.7%、「算定点数と業務量に差がある」が26.5%でした。

調査結果の詳細につきましては、以下をご参照ください。

結果報告書はこちら(PDF)

監修者のコメント

渡邉 裕 先生(北海道大学大学院歯学研究院 口腔健康科学分野 教授)

口腔に問題がある利用者の割合は約44%いるという結果が得られました。そのうち歯科が介入している利用者の割合は2~3割程度で、口腔連携強化加算を算定する予定のある利用者の割合は約18%という結果が得られました。つまり口腔に問題のある利用者約44%のうち、歯科専門職が介入している2~3割を除く約30%の利用者の口腔の問題は放置されている可能性があると考えられます。

口腔に問題のある利用者のうち食事や栄養にも問題が生じている利用者が5割程度いるとの実態があるにも関わらず、歯科および栄養の専門職に繋がらないのは大きな課題と考えられます。口腔連携強化加算は、介護と歯科、さらには栄養との連携を促す介護報酬なので、積極的に活用するとともに、地域の歯科医師会、栄養士会などに働きかけ、連携構築が進むことに期待したいと思います。

髙砂 裕子 先生(南区医師会訪問看護ステーション)

今回のアンケート結果は、訪問看護ステーションの特徴として、2020年度以降に開設されている5人以上の職員数(看護職)が半数以上でした。利用者が口腔に課題を抱えているにも関わらず、歯科医師との連携が全対象に行われているのは7.4%にとどまり、3割以下しか連携できていない事業所が50.3%に上っていました。また、食事や栄養にも課題が多く、口腔連携強化加算を算定しているのは11.1%のみで、制度の理解不足や同時算定の困難などが背景にあると思います。口腔連携加算情報提供書の基本情報・口腔の健康状態の評価8項目は、訪問看護で情報収集やアセスメントが必要な内容であり、その情報を多職種で共有することにより、利用者の豊かな食生活が実現できると考えます。一方、2022年に実施したアンケートと比べると、歯科医師や歯科衛生士との連携が増加傾向にありました。今後は介護保険の利用者全員の評価や、地域の歯科医師・ケアマネジャー等との連携強化に向けた取り組みが急務です。

川口 美喜子 先生(札幌保健医療大学大学院 教授)

訪問看護師が口腔や栄養に対応する際、利用者の食事場面を直接確認できる機会が少なく、摂取量や嚥下状態を正確に把握しづらい点が大きな課題と思います。その結果、十分なアセスメントや具体的な計画作成が難しく、利用者や家族の言葉に基づいたナラティブな対応に留まりがちになります。また、歯科医師や栄養士との連携不足により、専門的な評価や助言を得にくく、包括的なケアが実践しにくい現状も挙げられます。一方で、口腔と栄養の状態を定期的にチェックし、計画的に介入する重要性は高まっています。そこで、病院や歯科医院との緊密な連携や評価基準の標準化、報酬制度の整備が必要と考えられます。こうした取り組みにより、専門的知識を活かしたケアが進み、在宅療養者の健康と生活の質向上に繋がることを期待します。


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