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医療に貢献するアイデアをカタチに

技術センターでは、研究所で生まれたアイデアを製品としてかたちにする製剤技術部と 容器の視点から考えデザインする生産技術部が、切磋琢磨しながら当社独自のものづくりを支えています。

画期的な製剤につながるブレークスルーを目指して

技術センター 製剤技術部 製剤研究第1グループ リーダー 谷晴仁

大学では工学部で化学を専攻し、ものづくりにはとても関心がありました。製剤という仕事もものづくりなのですが、その内容は少し分かりづらいかもしれませんね。私たちグループが担当するのは輸液の製剤で、点滴などに使われる医薬品が対象です。新しい輸液についてのアイデアやスペックを研究開発センターから受け取り、または自ら調査し、当社の生産技術や製造設備などを踏まえて、どういう形の製品にしていくか考えるのが仕事です。

輸液というのは完成しているイメージがあって、さらに画期的なものを目指すにはイメージの現状打破が必要です。私自身は、輸液には強いのですが、他の製品のことはあまり知らないため、もっと幅広い知識や技術を蓄積してチャレンジしていきたいと思っています。

そもそも製剤というのは学際領域であり、いろいろな知識を持っている人が、それぞれの強みを生かして関わっていく分野です。薬学部出身でなくても、物理、化学、生物などのサイエンス一般の知識さえあれば誰でも活躍できます。多様な考えを持った人たちと一緒に、画期的な製剤につながるブレークスルーをこの手で実現していきたいですね。

異なる技術をまとめ上げる面白さがあります

技術センター 製剤技術部 製剤研究第2グループ リーダー 武田光市

入社当時は製剤研究所に配属され、輸液の処方設計や分析業務に1年間携わっていました。その後、DDS※1の製剤研究に関わり、その中で他社の医薬品を当社で受託製造するという業務に携わって現在に至っています。私たちが開発しているのは、当社の輸液製剤技術と他社の医薬品を組み合わせて製品化することです。受託製造なので、製品名は当然、他社ブランドになるのですが。

仕事はまず、委託メーカーの医薬品の剤形を、委託メーカーの要求や目的に合わせていろいろ変えてみることから検討を始め、当社の輸液バッグのスペックや工場の製造ラインに合わせて製剤および製造方法を最適化していきます。二つの製薬会社の異なる製品や技術を一つにまとめていくわけですから、いかに委託メーカーの要求に合致した製品にできるかというところが苦労のしどころですし、そこに面白さもあります。

製剤技術のベースとしては、プラスチック容器を使った製造という当社のキーテクノロジーがあります。しかし時代は容赦なく流れていきますから、その先を見据えて新しい技術をどんどん開発していかなければなりません。これからの私たちの大きな課題です。

  1. ※1 DDS:薬物の治療効果を最大限に発揮させる薬物送達システム(Drug Delivery System)

ものまねをしない仕事にやりがいを感じています

技術センター 製剤技術部 製剤研究第3グループ リーダー 菊地基哉

出身は薬学部です。入社当時はドラッグストアや薬局で売られている大衆市販薬の製剤研究で、軟膏(なんこう)を作ったりしていました。現在、私たちが所属するグループは、輸液に続く新しい事業の柱となるような製剤研究を担当しています。

私たちはこの10年間、消毒薬の製剤研究に関わってきました。その製品は、皮膚に塗る消毒薬としては国内で50数年ぶりとなる新薬承認と上市に成功しています。前例となるような製品がなく、研究開発、技術開発はすべて手探りの状態でした。研究開発センターの実験で、有効成分だけでは有効性と安全性の両立が難しいことが判明し、そのままでは製品化できないところまで追い込まれたときは、本当にピンチでした。私たち製剤技術グループは執念でさらに研究を重ね、ある化合物を添加物として加えることで、有効性を落とすことなく安全性を確保できることを突き止めました。それがきっかけとなって製品化は最後まで行き着くことができました。

ものまねすれば成功できるというモデルがない仕事は難しいけれど、それだけやりがいが感じられる。この仕事の醍醐味ですね。

容器の違いが品質の違いに表れるのです

技術センター 生産技術部 容器グループ リーダー 永田泰士

私たちのグループは輸液を主に担当しています。輸液が入っているプラスチックのボトルやバッグ、それを納めた段ボール箱などの設計開発から製造部門への技術移管までが業務になります。容器メーカーから買ってきて使うのではなく、原材料から開発しているところが当社の強みです。他社のものと比べられて良い意味で「液質が違う」と言われることがあります。品質を第一に考え、容器の材質や原料にもこだわって作っているから、それが品質の違いとなって表れているのだと思います。

輸液の容器はかつてガラス瓶でしたが、プラスチックのボトルになり、今はバッグが主流です。そのバッグも最初は1室だけだったものが、2室タイプになり使用直前に袋を押して隔壁を開通させ、2種類の輸液が混ざり合うようになっているものや、さらに3室、4室タイプへと進化したものもあります。このように新しい輸液の使い方が提案できる、画期的な容器の製品を提供してきました。今後はそれらに続くさらに革新的なものを生み出していくことが私たちの課題です。

容器開発の難しさは、病院や医療従事者によって、使用環境や輸液のハンドリングの仕方、保管場所などが千差万別だということです。すべてのニーズを満足させようとすると、何事もハイスペックになりコストアップになってしまいます。このハードルをいかに越えるか。チャレンジのしがいがありますね。

ものづくり=技術センターというイメージです

永田:入社以来、上司が何人も代わったけど、自分のやりたいことを止められたという記憶がないですね。もっとこうしたらとアドバイスされることはあるけど。

 谷:私もそうですね。失敗しても、だからやめろとは言われない。

菊地:会社全体が粘り強いと思いませんか。例え、開発テーマが行き詰まっても、良いコンセプトであれば研究を続けることが許され、その結果として製品が生まれる。最初は売れなくても、あきらめて撤退することなく、製品の価値を訴求し、世の中に広めていこう、分かってもらおうとするところがありますね。

武田:頑張って取り組んでいることに対して報いてくれるというか、決して否定されないです。

菊地:自由にやりたいようにやらせてくれますね。

 谷:私は工学部出身なので、ものづくりに携わりたいという気持ちが強かった。だから今の仕事にもやりがいを感じています。

武田:「技術センター=ものづくり」という感じでしょう。製品に関するすべて、販売するところ以外の全てのものづくりに関われるのが、技術センターのおもしろさですね。

菊地:どんなに研究が素晴らしくても、製剤化できなければ世の中に出ることはない。最終的に医療の場に届ける形にするのは、技術センターといえますね。

実際に医療で使われているのを見ると感激します

永田:入社して何年目かのことですけど、担当していた製品が上市されたんです。ある日、風邪を引いて病院に行ったら、その製品が実際に使われているのを見て、すごく感激して。実験室で四苦八苦して作り上げたものが、今こうして医療の場で使われているんだって。若いときに、そういう経験ができて本当に良かった。

武田:私の場合は、他社メーカーから製品が出るので、自分が関わったことは世間的にはずっと秘密のままですけどね。こっそり見つけて喜んでいます。

 谷:それだけに開発者として、しっかり責任感を持ってやっていかざるを得ないというところはありますね。

菊地:ところで製剤技術部はいろいろな部署と連携するでしょう。永田さんのいる生産技術部はもちろんのこと、研究開発センターの研究部門や開発部門、生産に関わる部門、それに営業部門や特許、契約の担当部門まで、いろいろな人と触れ合って、もまれて、人間的にも成長できるんじゃないかな。

永田:他のセクションとの壁もすごく低いから、いつでも全体を見渡してものづくりができるところも良いですね。

 谷:製剤というのは学際領域、いろいろな分野の知識を合わせて、ものを作っていきますよね。そのためにはさまざまな強みを持った人が集まって仲良くやらないとできない。しかも、ただの仲良しではダメで、切磋琢磨しながらでないとできない仕事ですから、そこも大きな魅力です。